にのだん社会保険労務士事務所

人と人をつなぐ「たすき」となり

人事労務管理全般をサポートします

にのだん社会保険労務士事務所だより「たすき」令和4年6月号(No.31)

【健康保険証からマイナンバーカードに】

 先日、政府がマイナンバーカードと健康保険証の機能を併せ持つ「マイナ保険証」の利用を促すことを目的に、将来的には現行の健康保険証について「原則廃止を目指す」方向で検討に入ったというニュースを聞きました。

 現在、マイナ保険証を利用できる施設は全体の19%のみとのことで、私自身利用したことはないですが、単にマイナンバーカードがあれば対象施設で利用できるのではなく、先にマイナ保険証として利用できるようにするための手続きが必要とのことです。またマイナ保険証にて診察を受ける際に初診や再診で微々たる金額とはいえ自己負担に加算される金額がある点からもなかなか普及率が上がらない要因になっているかと思います。

 国民からすれば「今の健康保険証で良いのではないか?」という意見が多いかもしれませんが、私は健康保険組合で仕事をした経験上、マイナ保険証の普及には賛成です。なぜかというと健康保険組合をはじめ、医療保険制度を管理する保険者には、診療機関で受診した際の自己負担(基本3割)分を除いた残りの7割分について診療月の翌々月に社会保険診療報酬支払基金を通じて医療機関から医療費の請求がまわってくるのですが、その中身であるレセプトを点検すると、中には被保険者や被扶養者資格を喪失してから、健康保険証を使って医療機関で診療を受けたレセプトが含まれていることがあります。その場合、レセプトはエラー扱いとなり、医療機関に申し出ても「病院では月初めに健康保険証を提示によりチェックしている」と言われれば、最終的に保険者が喪失後に健康保険証を使用した人に対して直接、医療費の返還を求める作業が毎回発生します。

 中には、任意継続で被保険者になった方(最長で 2 年間加入可能)が途中で保険料を滞納して強制的に資格喪失になったにも関わらず、そのまま健康保険証を使用して受診する事例も過去にはありました。健康保険証に有効期限2年間の印字があり、保険料を滞納して資格喪失している事実まで医療機関は知らないので、医療費の請求がまわってくることによりレセプトエラーが発生することになります。

 このような事務処理には時間と手間が発生し、大変非効率な作業が求められます。その経験を踏まえて、マイナ保険証を利用すれば、受診時に患者が直近でどの保険制度に加入しているか、未加入も含めすぐに分かりますので、医療機関や保険者にとっても非常に大きいメリットがあると感じます。

 しかし、マイナンバーカードの取り扱いが頻繁になるということは、紛失の可能性が高くなり、数字を医療機関で提示することがなかったとしても、重要な個人情報が盗み出されるリスクが当然大きくなるので、それらの対策が今後大きな課題になってくるかもしれません。

【働き過ぎについて考える】

 土曜や日曜のお昼は、習慣的にテレビでニュースをよく見ますが「お昼はいつも同じ人がニュースを伝えているなあ」や「12 時だけではなく、13時も14時も15時も同じ人だけど、この人働き過ぎじゃないかなあ」と考えてしまうことがあり、家族からは考え過ぎとよくつっこまれますが、テレビを見ながらその人の出てくる頻度や表情を見ながら余計な心配をすることがあります。

 私は若い頃、販売の仕事をしている時は、長時間労働が当たり前のように続くことがありました。あの当時は出世するためには人より長く働き、より休まず働くことが自身への評価に繋がると信じていたため、それを理由に効率的な働き方をしようと考えたことが一切ありませんでした。そして周りを見ても比較的長時間勤務している人が多い環境であったため、それが普通であると感じました。しかし、私自身一番に反省しないといけなかったのは、その当たり前と感じる長時間労働の環境を後輩の社員に対しても知らず知らずに強制していた可能性が高かったことかもしれません。

 その後、家族が増え、時間や休みに余裕がないことを理由に求人広告の営業職に転職しましたが、営業は前職のように頑張りをどんなにアピールしても結果を残すことが出来なければ、評価を得ることが出来ないことを思い知らされました。そこからやみくもに営業活動をするのではなく、いかに計画的に結果を残すことの出来る営業活動をしなければならないか考えるようになりました。しかし、どんなに頑張ったつもりでも、景気悪化による求人数の減少など売り上げ低調の影響が大きかったため、社会保険労務士の試験に合格したことを契機に事務職に転職しました。

 そして社労士事務所を開業する前まで勤めていたのが、和歌山県内にある健康保険組合で、そこでは基本的にほぼ残業なしで仕事を行うことを求められたので、時間を無駄にしない効率的な仕事を行うために、モノの配置を変更したり、アナログ的に管理していた帳簿等をデジタル化したり「費用をかけずに時間の省略につながることは何でもする」という改善に取り組む姿勢が私の働き方を大きく変えるきっかけになり、現在の事業運営にもプラスになっているのかもしれません。

 若い頃の私のように労働時間にとらわれずに働くことは、仕事が好きで夢中になっているのならば本人の自由かもしれません。しかし、今の時代は労働基準法で厳しく労働時間の管理が求められます。「あそこの従業員さん。ほとんど休まず休憩もせずに働いているなあ」このような噂や情報が回りまわって、場合によっては労働基準監督署が調査に来ることも想定されます。オーバーな話かもしれませんが、今の時代らしくSNS で過酷な労働に関する書き込みをチェックするセクションがあるという話も聞いたことがあります。「火のない所に煙は立たない」ことを念頭に経営者さんや人事担当者さんは従業員さんの日々の労働管理はもちろんのこと、働き方に対する悩みや不満が蓄積されていないかなど、さらなる気配りが求められるのかもしれません。

~最後までお読みいただきありがとうございました~